2022/04/26  
AKG K701-Y3の話

AKG K701-Y3(中国製 20220426購入)
 正直このクラスヘッドホン買っても音質の向上は見込めないのだけど、beyerdynamic DT880 Edition 600の記事で「予算で妥協するならもうK701で良くない?」とか書いてたら、本当にK701は最強の妥協ヘッドホンなのか?と言うことを確かめたくなったので買ってみました。

ちなみにこのK701、買う前の私の認識としては「HD650が1.7万円で売っている」と言う認識でした。元々HD650と同じくらいの値段で売っていたヘッドホンですからね。コスパ最強のヘッドホンなわけですよ。そんなにお買い得ならなぜ買わなかったのか?と言うと、今までも何度か買おうと思ったことがあるのですが、このヘッドホンはL側からR側への配線にヘッドバンドの針金が配線に使われています。はっきり言ってしまえばこれはセンス無いと。「線なんか繋がってたらどれもいっしょ」と考えるセンスの無い無神経で無頓着な技術者の手が入っていると言う事実に苛まれるので買うのはやめようと思うわけです。今回は「予算で妥協するならもうK701で良くない?」がテーマなので、細かな製品仕様にはこだわらないことにしたわけです。
私は3年保証の付いた正規品が欲しかったのでサウンドハウスでなくヨドバシでK701-Y3を買いました。1.9万円、ポイント込みで1.7万円ってところです。


まだエージングしてないですが、ATOLL HD120で鳴らした印象ではHD650に準ずるパフォーマンスがあるという感じです。
傾向はニュートラル。詰まり感なし。閉塞感なし。抑圧感なし。巷で言われているようなベール感はHD120で鳴らす限りは聴知出来ませんでした。単純にクリアでニュートラル。そういう印象です。ニュートラルと言ってもイマーシブて言えるレベルには音が荒れすぎていますが、それに近い音が鳴ります。機械の存在を忘れて音楽に没頭できるレベルには、あと0.9歩ってところですね。HD650やnighthawk carbonのようなモヤ感がなく、HPT-700のようなダンプされた音痩せ感も無い。またDT880 Edition 600のような強烈なサ行の掠れや音像の甘さもない。今まで手にしたバーンインノイズを流していないヘッドホンの中では一番癖の無い自然な音だ。どうやら妥協ヘッドホンと言うのは撤回しないといけないらしい。確かに見た目と値段は妥協しているのだが、音質に関しては妥協する要素が一つもない。この音で妥協しないといけないのなら他のヘッドホンは妥協だらけになってしまう。
音色はかなり良い。HD650ほどの豊潤さはないが、その代わり素直さとクリアさがある。解像度で言うとHPT-700の-30段ほど下(HD650は-10段下)、%で言うとHPT-700の87%くらいの解像度って感覚。奥行きは44m

K701は昔視聴した時はモヤっとした感じがあったのですが、私の環境でそう言う感じはありません。このヘッドホンはアンプで結構変わるようなのでそのうちアンプも変えてみようと思います。HD650はDiabloでバランス駆動しないとモヤ感は無くならないけど、K701はHD120でモヤ感なく鳴っているのでHD650ほど鳴らしにくいってわけではなさそう。いや、アンプじゃなくて、もしかしたらHD650のようにロットによって音が違うのかもしれません。DAPに挿してみたんだけど、モヤっとせずクッキリしたまんまなんだよね。DAPでもかなり良い音で鳴る。一応購入日とSNを書いておくと、K701-Y3, 20220426購入, SN:227794






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20220427_追記
12時間ほど鳴らし込んだけど、HD650を解像度でも凌駕するようになってきた。HD650の140%の解像度って感じだね。HD120ではHD650を鳴らしきれてないってのもあると思うけど。HD650はアンプで他のヘッドホンとの序列が変わるから基準にはしにくいなぁとちょっと思っている。
nighthawk carbonと比べても120%くらいの解像度かな。そして付帯音がやたら少なくてクッキリ聴こえる。原音忠実性高すぎでしょこれ。2万以下のヘッドホンだよ? 私が持っているヘッドホンの中では2番目に安いヘッドホンだよ? 「もしかして耳がおかしくなって安物ほど良く聴こえるようになっちまったか?」と思って一番安いATH-AD700を引っ張り出して聴いてみたが、かなり曇って聴こえる。オーテクだから曇りながらもクリアに聴かせようとする音作りだけど、定位がイマイチでスピーカーへの音の張り付き感が出る。これがイメージングを悪化させるので、音の曇り感やディティールの悪化に拍車をかける。HD650よりもかなり格下の音なのは間違いないな。というわけで私の耳がおかしいわけではないらしい。
あと低音が少ないと言う人いるけど自分の印象としては付帯音が少なくてスッキリ聴こえるだけで周波数上はちゃんと出ている印象です。K701は元々評価の高いヘッドホンだけど、それでもこのヘッドホンは過小評価され過ぎだね。






20220428_追記
ATOLL HD120で再生。
32時間ほど鳴らしたが、12時間時と比べて音が曇り始めて僅かにベール感が出てきた。解像度も落ちたね。解像度はHD650の110%の解像度って感じ。解像度ではまだHD650を上回っていますが、音色に関して言うとHD650を下回っています。ベール感があると言えどもHD650よりクリアではあります。ですが音が痩せてHD650のような肉声感がありません。HD650の方が音が生き生きして生命感のある音です。12時間時は全てにおいてHD650を上回っていたんだけどな。HD650どころかnighthawk carbonすら上回っていた。とは言え全ての面で悪くなったかと言えばそうではなくて12時間時は音が僅かに荒れる感じがありましたが、それがほとんど無くなっています(濁りでごまかされただけかもしれませんが)。奥行きは39mってところ(HD650は44m)。全体的な音質としてはHD650と同等レベルって感じでしょうか。

 エージングをして音質が悪くなったのは初めてなんだけど、思い当たるのは寺井尚子の音源をオールループで流していたってところでしょうか。 私はバーンインノイズなんてものを作っているので、何が起きたのかは理解できました。nighthawk carbonの記事でもやりましたが、音源を再生することで波形の固有歪が蓄積したのだと思います。でもエージングにはダイアフラムの慣らし効果があるので、大概の場合は新品なら音質は良くなります。 ダイアフラムの慣らし効果が少ない振動板で、歪の残留の少ないものを使っていた場合、音源の再生によって音質が低下してもおかしくはありませんが、現実にそんなものがあるとは思いませんでした。K701はバーンインノイズを流した方が良いかな。多分イマーシブな音に簡単に到達すると思う。
とりあえず普通の音楽音源で1000時間くらい鳴らしてレビューするつもりですが、この感じだと、恐らく世評通り、そして私の見込み通り「HD650と似たようなレベル」で落ち着くと思います。






20221020_追記


前回のレビューでは「K701はHD650と似たような音質レベルに落ち着くだろう」と結論を出して終了したのだが、その後また音質が上がってきてHD650を遥かに凌駕する音質で鳴るようになってしまった。以前「HD650はHD120では鳴らしきれない」と以前評価したのだが、それを考慮してもこれはひっくり返せないんじゃないか?と言うくらいの音質差で鳴る。 「これはちょっと下手なこと言えないぞ」ってことで、nighthawk carbonと同じように時間を掛けて慎重に評価することにしました。
結論を言えばK701に世評より遥かに高い評価を与えることになるのだが、K701はアンプで全然音が変わるらしいので、HD120との相性がすごく良いのか、単純に個体差で私の個体が当たりだったのか、エージングの仕方が良かったのか実際のところは分からないのだが、目の前にある個体はものすごく良い音で鳴るので素直に評価することにした。そもそも、いまさら世評通りのK701の評価を書いても読者も全然面白くないだろうから、これはこれで良いのだろう。

※約1600時間以上再生以降の印象です。エージングで800時間までは音質が大きく向上していったので、余裕を見て1600時間以上再生しています。現在1997時間再生です。 ただし、2000時間以降も音質に変化が見られたので、4000時間まで引っ張って追記しています。

今回は評価に使ったアンプがHD120になっています。HD650との相対評価をPMA-60を使っていた時の相対基準は使えないので、補正を行いました。基準を普段使っているEPT-700(02s91 LRSWHN741, 2.406Vrms, +470段(これを基準とする))にして、EPT-700の解像度を+470段と言うことにしました。EPT-700を基準にすると、解像度はHD650で290段、HPT-700で320段、nighthawk carbonで350段ってところでしょうか。
 解像度に段という単位を使うのはどうかと思うんだけど、伝統ですね。私の評価は「どの程度の位置づけか?」と「どういった傾向か?」くらいのことしか書いていないのですが、「どの程度の位置づけか?」をはっきりさせるためにできるだけ数字を使っています。味の評価に数字は用いないのと同様、音の評価に数字を用いるのは不合理なのは分かるのですが、数字を用いずに評価すると、見返した時に「あれ?これってどの程度の音質だったっけ?」となってしまいます。悪い、普通、良いとざっくりとしたことは分かりますが、何十種類も試作して、その中でどれが一番良いか?を評価する場合にはそれでは困ると言うことです。



調子の悪い場合の音質
2022/07/03_追記_エージング時間 1592時間_エージングはDAPでALL順再生。
ATOLL HD120で試聴。
ややほんの僅かに曇り感があるが、それ以外は問題なし。高域も粗くなくHD650レベルではある。 傾向はニュートラルだがややほんの僅かに曇り傾向。詰まり感なし。閉塞感なし。抑圧感なし。音色はすごく良い。まだ機械の存在を忘れて音楽に没頭できるレベルまであと0.02歩。解像度はEPT-700(02s91 LRSWHN741, 2.406Vrms, +470段(これを基準とする))の+200段程上。+670段の解像度。HD650(HD120再生)はEPT-700基準だと+290段の解像度なので、K701はHD650の231%の解像度と言うことになる。奥行きは44m



調子の良い場合の音質
2022/07/10_追記_エージング時間 1763時間_エージングはDAPでALL順再生。
ATOLL HD120で試聴。
これは何も問題ない音。高域も粗くないし、密度もある。
傾向はニュートラル。詰まり感なし。閉塞感なし。抑圧感なし。音色はすごく良い。まだ機械の存在を忘れて音楽に没頭できるレベルをボーダーから0.03歩ほど超えていきている。解像度はEPT-700(02s91 LRSWHN741, 2.406Vrms, +470段(これを基準とする))の+350段程上。+820段の解像度。HD650(HD120再生)はEPT-700基準だと+290段の解像度なので、K701はHD650の282%の解像度と言うことになる。奥行きは24m



音質について補足をしておくと、奥行きは「調子の良い場合の音質」では奥行きが24mになっていますが、これはカンストレベルになっているという意味で、「調子の悪い場合の音質」の44mより優れています。このレベルになると各楽器やボーカルの定位する距離が、ヘッドホンではなく音源に依存する傾向になっていきます。同じくバーンインノイズを流しているnightowl carbon.DT880E/600,ER4SR,AH-C820,SRH1540,HD600なども同じ24mの奥行きで鳴りますからね。楽器やボーカルの定位する距離はヘッドホンはもとよりER4SR,AH-C820でも変わりないんですね。楽器やボーカルの定位する距離が、ヘッドホンではなく音源に依存すると言うことは音場や定位に関してはある種のマイルストーンに到達したといって良いでしょう。
k701は「調子の悪い場合の音質」は約1600時間以降で一番音質が悪かった時の記録で、9割方ほとんどの場合は24mレベルで鳴ります。ちなみに1645時間以降は24mレベルを下回ったことは1回もないので長時間エージングで音質は安定してくるようです。



あと、高域は粗くないと書きましたが、調子が悪い時はHD650より若干劣るレベルになることが多々あります。と言ってもDT880E/600ほど粗くはありません。調子の良い時でHD650レベル、そうでないときはそれ以下と言う感じで歪感が気になると言う感じでしょうか。調子の良い時でもnighthawk carbonには勝てない感じです。高域が粗めなのがこのヘッドホンの弱点でしょう。高域が粗いと言うとヘッドホンの個性だと誤解する人がいるかもしれないので、別の言い方をすると「歪が多くて、金属楽器の質感が出ない」と言うことです。バーンインノイズを流したnightowl carbonやHD600と比べると明らかに歪んで聴こえる。そのせいで音も若干薄くなってしまっています。
別にHD650レベルならこのクラスのヘッドホンとして見るなら問題ないのですが、K701の音質レベルを考えれば、高域の歪感が多めで、高域の表現は苦手な感じなのかな・・・と。確かに透明感はあるけど質感は言われているほどではないと思う。 ただし、これは結構高い評価基準で言っているので、値段を考慮すれば全然合格点レベルではあります。それにK701はHD650やnighthawk carbonと比べれば高域は粗いのですが、逆にHD650やnighthawk carbonはK701と比べて濁りがかなり多いです。トータルで見てHD650やnighthawk carbonよりもずっと良い音です。


解像度はかなり高い。DR.DAC3(ドノーマル)やPMA-60からconductor V2+に変えた時くらいの音質差をHD650に上乗せした感じ。K701はかつてHD650とかDT880と同格扱いされてたけど、どうしてその程度の評価しかされてなかったのか首を傾げるくらい圧倒的に良い音で鳴っている。 バーンインノイズを鳴らしたnightowl carbonやHD600なら+1200段の解像度と言う感じなので、K701よりも高いのですが、せいぜいk701の46-79%増しで2倍には届かない感じです。圧倒しているとは言いがたい。この程度しか差がつかないことに正直驚いている。(それでも、DR.DAC3(ドノーマル)とmicro iDSD Diabloくらいの音質差はあるけど。) K812ならK701を圧倒できるのだろうか?なんせsuperior reference headphonesだし。


それよりもK701の一番すごいところは癖の無さ。nightowl carbonやHD600ではかなり苦労したイマーシブな音をいとも簡単に達成してくる。バーンインノイズを流さないで普通の音楽流しているだけなんだけど。素性の良さが段違いなんだな。聞いていてしっくりくる素性の良さだ。
イマーシブな音とは何度も書いていますが、「機械の存在を消して音楽だけが存在する世界を構築する」ことです。これには音源の波形成分以外の機械のノイズ成分を消す必要がありますが、ノイズを完全に消せるわけではありませんから、イマーシブと言っても厳密な意味で「機械の存在を消した音」を出しているわけではありません。ところで人間は耳に入った音そのものを直接聞いているわけではなく、脳の中で音をイメージとして再構築しています。そして脳はある程度のノイズは無視できるので、脳が原音をイメージするのに邪魔をしない程度までノイズが減っていれば問題ないと言うことになります。もちろんノイズは少ないほど原音をイメージしやすくなるので良いと言うことにはなるのですが。
k701はどの程度のレベルかと言えば上に書いた通りイマーシブな音のボーダーラインを少し上回るか、ボーダーラインをウロチョロするあたりです。このレベルだとイマーシブと言っても、他と比較すると僅かに癖があるのが分かってしまう。普通に聴いていれば気にならないレベルではありますが・・・
バーンインノイズを流したヘッドホンだとnightowl carbon, AH-C820, HD600,SRH1540, DT880E/600がイマーシブであると判定されるレベルには到達しているけど、やはり比べてしまうとやはりそれぞれ癖がある。この中で一番癖が少ないのはHD600かnightowl carbonでしょうか。機械由来のノイズを完全に消せるわけではありませんからね。厳密な意味で機械の存在を完全に消すことはできないと言うことです。せいぜい機械の存在を「忘れる」レベルでしかない。現状では地上数十cmを超低空飛行しているようなもので、ひとたび下を見ると地面が目と鼻の先と言う感じでしょうか。それでも地べたを這いつくばるよりは遥かに良い。
注意点としてはK701はイマーシブな音を出す能力を持ち合わせていますが、イマーシブな音を出すには再生環境も影響します。機械の存在を消すために極力癖の無い機種を選ぶ必要があります。

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以下はエージング時間4245時間時の印象。上記の1763時間時とはエージング法が少し違います。3559時間まではALL順再生で、それ以降はALLランダム再生となっています。
音質は大体ハイレベルで似たような印象なので、調子の良い時悪い時で分けていません。



2022/10/20_追記_エージング時間 4245時間_エージングはDAPでALLランダム再生。(3559時間まではALL順再生)
ATOLL HD120で試聴。
ランダムエージング開始から686時間。
ほぼ完璧だが、高域の歪感はやや気になる。聴きはじめは何も問題ない気がするのだが、長時間聴いていると疲れやすい感じ。やはり高域の歪感は出やすいヘッドホンなのかな。高域の歪感はHD650以上でnighthawk carbonより僅かに劣るかも。鮮烈さはnighthawk carbonを圧倒する。歪感はnighthawk carbonより僅かに劣ると言ってもnighthawk carbonhaは濁りによって歪感は誤魔化されるが、K701は濁りが少なく、歪もよりはっきりわかってしまうので、「nighthawk carbonより僅かに劣るかも」レベル以上に歪っぽく感じてしまう。曲によっては耳に突く音なんだよね。これがこのヘッドホンの欠点だろう。だがそれ以外の欠点は見当たらないといって良い。「ポテンシャルの割には高域の歪が多すぎるよ」とは思うけど。あと音像に芯が足りない感じが僅かにする。これもDT880E/600と同じですが、DT880E/600ほど酷くはありません。調子がいい時はこの癖は出ません。
傾向はニュートラル。詰まり感なし。閉塞感なし。抑圧感なし。音色はすごく良い。まだ機械の存在を忘れて音楽に没頭できるレベルをボーダーから0.10歩ほど超えていきている。解像度はEPT-700(02s91 LRSWHN741, 2.406Vrms, +470段(これを基準とする))の+690段程上。+1160段の解像度。解像度に段という単位を使うのはどうかと思うんだけど、伝統だね。HD650(約800時間,非ランダム再生エージング,HD120再生)はEPT-700基準だと+290段の解像度なので、K701はHD650の400%の解像度と言うことになる。奥行きは24m
HD650の400%の解像度というと桁がおかしいので良く分からんと思いますが、HD650が濁って聴こえてしょうがないレベル、比べるだけ無駄、次元が違うと言う感じ。このあいだ一区切りつけて完成させたバーンインノイズ(Sound Improver One)を鳴らしたnightowl carbonは+1200段の解像度なのでそれに匹敵するレベルでしょうか。これをはっきり超えられるのは今開発中のバーンインノイズをテストしているATH-AD700くらいです(だいたい1500段くらい)。さらに癖の無さナチュラルさに関しては高域を除けばK701が一番ですね。ただし「高域を除けば」のエクスキューズが付きます。高域はそこまで良くはないですね。一聴してHD650やnighthawk carbonと比べて劣っているというわけではありませんが、長時間聴いていると疲れやすい感じはする。

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エージングに関して
エージングに関しては普通の音量で再生して少なくとも800時間以上は必要です。高域の歪感が少なくなるまでは1800時間以上は欲しい。そしてより高い音楽性を得たいなら2100時間以上と言ったところ。
今回は空いているヘッドホンアンプがなかった・・・と言うよりPCを共有してバーンインノイズを誤って流してしまう事故を防ぐため、DAPでエージングしています。DAPなので高電圧が掛けられず0.6Vrms程度の電圧です。普通に聴く程度の音量で鳴らした感じでしょうか。音楽もnighthawk carbonの時のように特定のアルバムを連続再生するのではなく、入っている曲をall repeatで順に再生していく方法にしています。この方法だと音質の仕上がりは運次第なところはありますが、全体としてみれば楽曲固有の癖は平均化されていくはずなので、nighthawk carbonの時のようにどのアルバムが音が良いかとか悩む必要が無くなります。ただし仕上がり音質が運次第なので、再生を止めたタイミングによって調子がいい時と悪い時がでる。
K701は鳴らし始めはEPT-700に負ける音質でしたが、400時間を超えると調子が良ければEPT-700を上回るようになり、800時間では調子が良かろうが悪かろうが、どんな時でもEPT-700より上の音が出るようになりました。鳴らし始めはバスが軽い(量が出ないのでなく質感が軽い)感じがありましたが、いつの間にか解消していました。
400時間がエージングの第一段階で、800時間が第二段階ってところ。800時間と1600時間でも差はありますが、記録によると解像度で平均して1割くらい上がっているような感じです。また、800時間では調子がいい時と悪い時の音質差が結構大きかったのですが、1600時間になるとその音質差も小さくなっていって、平均的に良い音が出るようになってきます。さらに1800時間を超えると高域の歪感が少なくなり、2100時間で歪感はHD650よりも小さくなり、よりイマーシブで密度のある音になってきます。このころになると調子がいい時と悪い時の音質差も800時間時よりもさらに小さくなります。
また、3559時間まではALL順再生なのですが、2333時間以降高域の癖が強く出て、音質の低下がおこりました。エージング時間を長くとっても癖が取れなかったので、3559時間以降はALLループ,ランダム再生に切り替えています。ランダム再生にすると高域の癖が小さくなって聴けるレベルになったので、レビューではこの状態で評価しています。(ただしランダム再生でも完璧に高域の癖を消すことはできなかった)

そう考えると単純なエージング時間が効いているのは2000時間前後かな?と言う感じです。ただ「バーンインノイズを大音量で鳴らした方が確実に良い音が得られるし、普通のエージング法でここまで時間をかけるのは労力と資源の無駄」と言う気もするのですが、普通のエージング法でどこまで良い音が出せるのかも一つの楽しみですよね。私はこのヘッドホンは暫らく基準として使おうと思っているので、今のところバーンインノイズを流すつもりはないです。次に何かヘッドホンを買ったらK701を超えられるかが基準になるでしょうね。


※比較に使っているHPT-700やHD650, nighthawk carbonに関してはHPT-700が1000時間以上、HD650が推定800時間前後、nighthawk carbonが9576時間ほど鳴らし込んでいます。この中でHPT-700とHD650はエージング時間が短いので、2000時間以上鳴らし込んだk701と比べるのはフェアではないかもしれません。HPT-700やHD650ももっと鳴らし込めば音が良くなるかもしれません。ですがHPT-700やHD650は基準として使っている関係上音質をあまり変えたくない。変わってしまうと困ると言うのがあります。


※エージングの時間だけでなく、音楽の再生方法も影響するようです。3559時間まではALLリピートの順再生で再生していましたが、2000時間時よりも音質が低下しました。高域の歪感が増大して、解像度は高いのにそれほど良い音とは思えなかった。しばらく原因が分からなかったのですが、ALLリピートのランダム再生でかなり改善しました。要は同じ波形パターンを再生すると歪が振動板に蓄積していくと言うことのようです。これを解決するには完全に歪を印加しない波形を再生するか、ランダム再生で同じ波形パターンを入れないようにするしかないようです。とりあえず100%の性能で評価したいので、ランダム再生で鳴らした状態で評価しています。HPT-700やHD650は基準として使っているので、とりあえず今まで通り何もしていません。
ただしランダム再生による再生法も万能ではなくて、やっぱりK701はサ行が若干掠れる感じがする。。。800時間とかそのあたりだと気にならなかったんだけど、4000時間時の方がサ行がきつく出ている。これは振動板に何かしらの特性の変化があったのかもしれない。解像度とか定位感とか高域を除けば以前より全然良くなっているのは確かなのですが、K701の振動板素材の特性として高域に癖が出やすいのでしょう。もしくは付帯音が減っているので高域の癖が耳に突きやすくなったのかもしれませんが。。。ランダム再生でもそこまでの癖を取り除く効果はないと言うことです。個人的には100の状態で評価してあげたいのですが、現状のエージング法ではこの癖を取り除くのはお手上げ状態と言った感じですね。



音量に関して
私の聴いている音量だと、録音レベルの高いポップスなどで大体0.6-0.8Vrms(1kHz, fullscale, 62Ωload)あたりの音量になります。クラシックなどなら1.2-1.6Vrms(1kHz, fullscale, 62Ωload)は必要と言う感じでしょうか。音量を取るだけなら1.6Vrms以上取れれば十分ですが、アンプの歪を考えるとその倍以上の出力はあった方が良いと思います。



このヘッドホンの悪いところも書いておこう。

・まずイヤパッドの質感が残念。もう質感と言う言葉を使うのもおこがましい感じ。みすぼらしいとか汚らしいと言った方が正解だろう。私の個体だけなのかもしれないが、イヤパッドは薄いグレイなのだが、微妙に日に焼けた古ぼけた感じがする。部品管理が悪くて実際に日に焼けたのか、元々そういった質感なのか分からないが、率直に言って着古した古着のような質感。ぞうきんと言ったら言い過ぎだろうか。着古した古着も雑巾として使えるので似たようなものだろう。「これ雑巾みたいじゃね?」と思いはじめたら雑巾のように思えてくる色合い・質だから困る。ベロアの毛も均一に入っていないし、ところどころ抜けて下地の布が見えているところもある。かなり質の悪い布地を使っているようだ。個人的に安っぽいのは気にならないが、汚らしいのは我慢出来ない。このイヤパッドのおかげでこのヘッドホンは値段以下の安ヘッドホンに見えるばかりか、ボロいヘッドホンに見えてしまう。白のTシャツを新品で買ったのに古びて黄ばんだTシャツが送られてきたような気分だ。。。HD650/600, DT880E/600と並べて見ても、K701のパッドは明らかに質が劣っていると思う。
※画像がないと私の言っていることが真実かどうかは分からないので、下の方に画像を貼っておきます。それを見て各自で判断してください。画像見て「これはひどい」と思う人もいれば「これくらいなら全然OK」って人もいると思うので。カメラのオートモードだと白っぽく見えるので、パッドの色合いが肉眼で見た感じに近くなるようホワイトバランスと露光時間を調節して撮影しています。ちなみに買って三日目くらいに撮影しました。


・箱出しの段階で本体に埃や汚れが付着していた。ウェットティッシュでヘッドバンドの針金やケーブル拭いて黒いの付くし、どういった状態で部品を保管していたか想像に難くない。

・ヘッドホンスタンドなる無意味なものを付けたせいで、箱の奥行きがかなり大きくなっている。箱に入れて保管する場合はスペースを取って仕方がない。そもそもイヤパッドがボロいみすぼらしいヘッドホンをディスプレイしても悲惨な気分になるだけだろう。 ヘッドホンスタンドを削ってイヤパッドの質感を上げた方がよっぽど良い。それにヘッドホンスタンドよりもエツミのキルティングポーチで保管した方が良い。埃から守ってくれるし、傷も防げる。つまりエツミのキルティングポーチ最高。

・LRの渡り線にヘッドバンドの針金が代用されている。ただしこれの音質差は非常に軽微でR側の方がL側よりもややクリアな程度だ。ユニットの個体差の方が大きいだろうし、そういった誤差に埋もれる差ではある。これを両耳で聴いた場合、LRの音質差に違和感を覚えることはまずないだろう。だが、ユニットの誤差がなかったとしても、渡り線を使った場合とそうでない場合で音質には違いは絶対に出るし、比べると簡単に聴知出来る。これは断言して良い。そう言った誤差要因を組み込まれるのは気分が良くないものだ。私はこのヘッドホンはバランス化しないだろう。手間をかけてバランス化しても、R側だけ先端に針金が付いていると言う事実に苛まれるからだ。あとバランスにすると音色が悪くなるので、ここまでクリアだとそのデメリットを被ってまでバランス化する意味は果たしてあるのだろうか?と言うのもある。











































画像を並べると、色合いにバラつきが結構あります。露光時間が違うだけでも色合いが変わってしまうので、肉眼で見たとおりに取るのは難しいようです。なので参考程度にしてください。









ではK701は買いか?
音質だけで言うなら買い。HPT-700以上にお勧めできる。バーンインノイズ未再生時の音で言うなら、HPT-700, HD650, HD600, nighthawk carbon, nightowl carbon, DT880 Edition 600, SRH1540と比べても原音忠実性が群を抜いて高く、誰にでもお勧めできるレベルの音だ。はっきり言って次元が違う。「もっと高域に上質感があれば・・・」とは思うけど。
もしHD600をフラットで原音忠実だと信じている人がいるならK701を聴いてみて欲しい。K701の方が圧倒的に原音に忠実な音が鳴るはずだ。固有の音や癖が極めて少なく、ヘッドホンの音でなく、(うまくすると)純粋に音楽を楽しめるレベルの音が出る。当たり前の音が出てくるこのすごさよ。これを無難と言う言葉でかたづけるのは製作者に失礼なレベル。もしこのヘッドホンで良い音が出ないって言うなら、エージング不足か再生環境か外れ個体かを疑った方が良いだろう。このヘッドホンは「ヘッドホンアンプが必須」だとか、「再生環境のレベル上げると印象が全然違う!」とか言われてるのですが、自分の印象ではK701で良い音出すのはHD650を鳴らしきるより遥かに難易度が低いので、K701で良い音出せないアンプは根本的に駄目なんだと思う。HD650なら多少良い音で鳴らなくてもしょうがない。でもHD650には鳴らしきる喜びがある。※2
 だが、今すぐ買えとは言わない。まず、パッドの質が悪くみすぼらしい見た目になってしまっているので見た目を気にする人には合わないだろう。次に現状いつでも買える商品なので慌てて買う必要もない。コストパフォーマンスに関しても褒める気にはなれない。
確かに音質は「K701があれば5万以下のヘッドホンはいらない」と言う意見もなるほどと言えるものがある。私はK701を実際に買って聴いてみるまで「それはK701が5万クラスの音がするから」だと解釈していた。試聴でもそれくらいのレベルだと感じていたしね。だけどそれは間違っていた。買って自分の環境で聴いてみたら分かるが「K701が5万クラスの音がするから」ではなく「その辺に転がっている5万クラスのヘッドホンではK701に音質で勝てないから」だと理解した。上で「(K701-Y3は)固有の音や癖が極めて少なく、ヘッドホンの音でなく、(うまくすると)純粋に音楽を楽しめるレベルの音が出る。」と書いたが、上にあげているHPT-700, HD650, nighthawk carbonなど他のヘッドホンでは、このレベルの音に突入することはありません(※1)。少なくともHD120で鳴らす限りでは、ヘッドホンの癖ばかり目立つような音が鳴ります。「癖があるけど良い音」レベルの音。HPT-700ですらイマーシブにはほど遠い音しか出ない。(もっともバーンインノイズを鳴らしたら恐らく出せるだろうとは思うけど)。K701-Y3はバーンインノイズ無しでイマーシブな世界に突入できる現状唯一のヘッドホンだ。K701-Y3と比べるとHPT-700やHD650は濁って聴こえるし、特にHPT-700は生気のない音に聴こえてしまう。パッションや感情を表現する音楽性がK701-Y3の方が段違いで優れている。この安ヘッドホンをここまで褒めてしまうと他のヘッドホンの立場が全くないと思うのだが、事実、音が良いのだから褒めるしかないんだよね。
 だが、音質だけで言うとコストパフォーマンスがとてつもなく良いのだが、それでもコストパフォーマンスを褒める気になれないのは、イヤパッドなど安くし過ぎた弊害が見て取れるからだ。音はすごいがパッドはしょぼい。(いや、それ以外の見た目もしょぼい。)この雑巾イヤパッドでは5万クラスの代替をするのは見た目的には難しいだろう。サードパーティー製のパッドもあるのだが純正の音でなくなるのが気に入らない。個人的には値段上げるなり、スタンドを削るなりしてパッドの品質を上げてほしい。ともあれ生産中止になる前に1度は聴いておいたほうが良いヘッドホンではある。
最後にK701-Y3に点数を付けるなら、雑巾で出来たみすぼらしいイヤパッドに-100点、渡り線にヘッドバンドの針金が使われているのに-50点、この時点で並のヘッドホンならゴミだと判定されるのだが、このヘッドホンの音質には(HD120で鳴らしたHD650を100点として)230点をあげたい。このヘッドホンは良い。良すぎる。だが音質と見た目が全く釣り合っていないのが非常に残念だ。だから総合点では80点だ。値段が安ければ良いわけではない。


 「ちょっ、ちょーっと待って!上で701はHD650の400%の解像度と抜かしてたんだから、音質は400点でいいんじゃないの?そしたら総合点は250点じゃん。圧倒的じゃん」と突っ込まれそうだから言っておく、別に音質の評価が解像度だけで決まるわけではない。でも2100時間以上鳴らしたK701がHD650に負ける要素なんて何一つないし、400点くらいあげても良いかもしれない。だがその場合、雑巾で出来たみすぼらしいイヤパッドに-100点、渡り線にヘッドバンドの針金が使われているのに-50点、良いもの感が全くないどころか、マイナスの駄目モノ感漂うビルドクオリティーに-170点の補正を掛けさせてもらう。だから結局総合点では80点だ。ずるいと思われるかもしれないが「如何に音質が良かろうとも、総合点で100点は絶対あげたくない」そう感じさせるものがあるというわけだ。もしK701が並の音質だったら「絶対買うな!ゴミ。」と書く自信がある。nightowl carbonは愛着を持って使っているが、このヘッドホンには愛着がわきそうにない。もし「HD650とK701どちらか一方だけ手元に残せ」と言われたら、私ならHD650を手元に残す。そういう意味で自分の中ではどこまで行っても80点のヘッドホンだな。音質以外に取り柄が全くない。いや音質以外は欠点だけだ。雑巾で出来たイヤパッドも、銀色の装飾が安っぽく、子供のおもちゃ感漂う質感も全てネタにできる人だけが買う資格がある。


※1 ただし、iDSD Diabloで鳴らしたHD650のバランスは、イマーシブに近い音が鳴っていたので、環境によってはイマーシブな音を他のヘッドホンでも出せる可能性はあります。しかし、HD120やConductor V2+のシングル再生ではHD650からイマーシブな音を出させるのは難しいのではないかと思います。ケーブルやインシュレーターで音質を底上げしてやれば可能だと思いますが、ポン置きではまず無理です。

20221208_追記
※2 K701がアンプで音が激変すると言うのは本当みたいです。先日RMEのAIOってサウンドカードのヘッドホン出力で鳴らし込もうと音量確認の為に音出してみたんですよ。そしたら凄まじく音が悪いの。音がモヤ付いてフレッシュさが感じられないし、躍動感や生命感が全然感じられないの。K701をあんなに褒めてたのにその良さが全然感じられない。。。私はK701を原音忠実性が高いと褒めていたけど、このヘッドホンを買いさえすればそういう音が出るわけではないみたいです。やっぱりアンプの能力を要求するし、能力があってもDiabloのように癖があればその良さを発揮できない。原音忠実性が高いこと、原音のイメージに近い音が出せるのが持ち味なのに、アンプに聴感上認知できる癖があると台無しになるわけです。K701はHD650ほどアンプの要求は厳しくないけど、アンプの癖に対しては寛容でない印象です。
HD650は同価格帯のHPT-700並の解像度と定位で鳴らそうとすると、アホみたいなアンプ能力が必要になりますが、アンプの癖に関しては寛容でDiabloでもまぁ良いかと思える鳴り方をしています。アンプに癖があっても、「原音とは違うけど音楽的」という鳴り方をするので、ある意味鳴らしやすいと言えると思います。ちなみにK701の場合はアンプに癖がある場合は「原音とは違うし、これどこかおかしいよね?」と言う違和感しかなく音楽的とは感じられませんでした。いわゆる不気味の谷現象というものなのでしょうか?






20221229_追記_エージング考(長いので結論を知りたい人は最後のまとめを見てね)


このまま「K701最強!AKGの技術力は世界一いいいいいい!もう全てのメーカーはAKGの前にひれ伏すしかな〜い!さよならセンヘイサー、ベーヤー、もう君たちの時代は終わった。」ってなると思った?
この話には続きがあるんだなぁ。 K701がHPT-700やHD650よりもちょっと良い程度の音質だったらK701凄い!で終わってたと思いますが、「HPT-700やnighthawk carbonがゴミのような音に聴こえる。。。K701はHD650とかDT880と同格扱いされてるけど、どうしてこの程度のヘッドホンと同格扱いされてんの? K701と比べたらHD650なんてカスよカス! K701より良いヘッドホンって存在するのかしら? もしかしてヘッドホンの完成形?」って思うくらい音が良かったからね。さすがにこれはK701のポテンシャルだけじゃないと薄々気づくわけですよ。そこでK701はHPT-700やHD650とはエージング法が違うという問題に行き着く。考えてみれば、K701はエージングでいつもと違う方法のALL順再生, ALLランダム再生でやっていて、しかも、順再生とランダム再生では仕上がり音質が違う。この事実から、K701とHPT-700やHD650, nighthawk carbonの音質差はエージング法の違いなのではないか?と思うようになった。HPT-700やHD650, nighthawk carbonは1曲リピートで日替わりで曲を変えるか、1アルバムリピートで日替わりでアルバムを変えるかというエージング方法しかしていない。しかも順再生だから同じ波形パターンが何度も繰り返されて、音質面では良くない鳴らし方をしてしまっている。そこでそれを確かめてみようと言うことになった。
上でHPT-700やHD650は基準にしているから、いじりたくないと書いたが、今後K701を基準にするなら、HPT-700やHD650も条件を揃えないと基準にならないし、相対的な評価は今回のHD120で鳴らした時のように補正を掛ければいいと考えた。



大量の曲をランダム再生するエージング法がヘッドホンを評価する上で妥当な方法かについてだが、「通常の使用の範囲内で達成できる音質」ならば、その評価は公正だと言う考えです。爆音で鳴らすとか、バーンインノイズのような特殊なノイズ流すとかそうやって達成した高音質はメーカーの想定した音質ではないので、レビューとしては妥当性に欠けるという考えです。みんながみんな爆音エージングしたり、特殊なノイズ使うのなら、妥当性はあると思いますが、そうではありませんからね。
もっとも、エージングの仕方に関してほとんどのメーカーは何も指定していないし、AUDIO QUESTは150時間程度の初期エージング時間を指定するだけだし、SHUREに至っては「エージング?そんなの存在するわけないだろw 俺たちの製品は最初から最高の音なのさ!(ドヤ!」と言うスタンスなので初期状態で評価してゴミと判定されても文句は言えないと思う。

ちなみに

「大量の曲をランダム再生する」のはありえない使い方ではないので俺的にはセーフ!

今回のK701のように2000-3000時間以上鳴らして評価するのはどうか? 一般的には100-200時間程度で評価をされていてそれで十分とされています。しかし事実、200時間と2000時間では音質が明らかに違っていて、200時間は全然鳴らしていないに等しいレベルです。K701で言うと、216時間時で、2333時間時(ランダム再生じゃない)の46%程度の実力しか発揮できていません。200時間で評価するなんて、マジありえない。加熱時間が足りない生焼けの料理を食べて評価するようなものだ。それに3000時間は1日3時間使って3年で達成できるし、そんなに非現実的ではないだろう。

というわけで「2000-3000時間以上鳴らして評価する」のは個人的にはセーフ!と言うことにしておこう。というか2000時間とか長時間エージングするようになって、200時間かそこらで評価するのは音質の面から言ってありえないと言う感覚になってしまった。繰り返しますが200時間は鳴らしてないに等しい状態です。ちょっと通常の範囲内と言うにはきわどい条件だけど、できるだけ100の状態で評価しようと思うので、「通常の使用の範囲内!セーフ!」と言い張ることにした。3000時間は1日3時間使って3年で達成できるからね。


今回はHPT-700のみランダム再生のエージングを行い、HD650は比較のため何もしないことにした。エージング時間はK701の事例から2100時間以上、様子を見て+αとした。音量はK701の場合に準じて通常使用レベルの音量(0.539Vrms, 1kHz, 32Ω)とした。
現在のエージング時間はランダム再生エージング1123時間 + 通常の再生エージング約1000時間で、この段階で初めてK701を超える音質と判断できたので、区切りとして記事にしておくことにした。



2022/11/14_1123時間ランダム再生(+1000時間の通常の再生エージング)_DR.DAC3, 1kHz, 0.539Vrms, 32Ω
傾向はニュートラル。詰まり感なし。閉塞感なし。抑圧感なし。音色はものすごく良い。まだ機械の存在を忘れて音楽に没頭できるレベルをボーダーから0.09歩ほど超えていきている。解像度はEPT-700(02s91 LRSWHN741, 2.406Vrms, +470段(これを基準とする))の+700段程上。+1170段の解像度。解像度に段という単位を使うのはどうかと思うんだけど、伝統だね。HD650(約800時間,非ランダム再生エージング,HD120再生)はEPT-700基準だと+290段の解像度なので、HPT-700はHD650の403%の解像度と言うことになる。奥行きは24m。これはK701(エージング時間4325時間以上)を解像度で超えている。3000-4000時間まで引っ張ったら、もうちょっと良くなるかもしれない。
※3000-4000時間までエージングしたらまた追記します。


K701と比べてHPT-700の優劣を羅列すると

HPT-700が優れているところは
・K701よりもイメージングがはっきりしていて実在感のある音が鳴る。K701はDT880E/600ほどでないが音像に芯がない感じがでる。
・SN感はK701よりも良い。
・解像度はK701とほぼ互角か僅かに良い。
・K701ほどではないが、サ行は掠れるし、完璧ではないのだが、K701よりも高域の歪感は少ない。


K701が優れているところは
・安い・・・と言おうと思ったけど、あのパッドを考えれば安いことはむしろ欠点だろう。安けりゃ良いってもんじゃない。中国の技術力でもあの価格で真っ当なパッドを付けるのは無理。
・HPT-700よりもSPユニットが離れているような鳴り方をする。つまり閉塞感が少なく広がりのある鳴り方をする。ただし、K701とHPT-700でSPユニットとの物理的な距離はそんなに変わりませんし、HPT-700もスピーカーは完全に消えてハウジングの存在を意識することはないので、この差は密閉型、開放型の典型的な違いではありません。機種による違いだと考えてください。
・自然さではK701の方がわずかに上。ではあるがHPT-700と拮抗している。比べるとK701の方が音色に癖はないし、HPT-700は僅かに音色が抑圧されているのが分かる。だが、音像の出方がK701の方が芯がない感じで不自然に聴こえるし、聴いてて気もち良いのはHPT-700の方なんだな。K701はHPT-700の比べると音がふやけて聴こえるんだよね。自然さが優れていると言ってもその程度の差しかない。開放型の方が自然な音が出せるのは当然として、密閉型でK701に拮抗するレベルの自然さを出しているHPT-700の方が技術的には優れているんじゃないかと思える。



また、お遊びでDiablo引っ張り出してHD650(バランス標準ケーブル,推定800時間,非ランダム再生エージング)と比べてみた。まずHPT-700でHD120とDiabloの音質の違いとして改めて比べてみると、HD120ではイマーシブな音を達成していたのにDiabloでは達成できなくなったこと。Diabloは音がモコモコしてやや曇り気味で解像度が若干落ちたと言うところでしょうか。解像度で200段くらい落ちた感じです。現状HPT-700は1170段の解像度という評価ですから2割近く落ちた感じかな。やはりHD120は良いと思ってしまう。以前のHD650での試聴とは違った評価ですが、今回はHPT-700での試聴なのでこのような結果になっているのでしょうか。確かにHD650だとHD650の癖に塗りつぶされて、アンプの癖がそこまで気にならないと言うのはあるのよね。
現状ではイマーシブかどうかに関してはHD120にかなり分があると言う感じ。現状ではHD120の方が良い音だと思う。解像度等で言うとそこまで差はないのだが、HD120の方が全体として作為的な部分が少なくてすっと受け入れられる感じ。現状Diabloは音色が抑圧されている感じで、Diabloで評価するとHPT-700もK701もその良さが分からないだろうと言うような鳴り方。ただしDiabloもエージングしていったら分からないけど。ほんとにエージングしてないから。この評価をDibloの正当な評価とは思わないでね。


それでHD650のバランスとHPT-700を比べてみることにする。アンプは両方ともDiabloで鳴らしている。この比較の趣旨は「エージング法による音質の違いはバランス接続の効果を超えるか?」と言うものだ。もっともHPT-700の評価を考えたら、やる前から結果が分かっているのですが、私の予想ではHD650のバランスよりもHPT-700の方がずっと音が良いと予想していたが、HD650のバランスが意外と頑張る。解像度で300段くらい下で、HD120で鳴らしたHPT-700の500段くらい下と言う感じ。670段クラスの解像度で鳴っている感じ。conductor V2+鳴らしたHD650は確か500段かそこらだったので、この評価だとconductor V2+鳴らしたHD650よりも高解像なのは確かで、バランスの効果は確かにあると言う感じ。それでもHPT-700と比べると音がぼやけるし、音色がくすむ。音色もシングルのHPT-700の方が開放感がありより色彩感豊かなカラフルな音が出ます。HPT-700が劣っていると感じるのは音痩せ感がまだ若干残っているところだけかな。それでも全然駄目って感じにならないのがHD650の不思議なところ。HPT-700とDiabloの相性が良くなくて、良い鳴り方はしていないのもあると思う。HD120と比べると表現力がガクッと落ちる感じがするけど、HD650はそんな感じがせず、HD120でもDiabloでもそれなりの表現力を維持する感じ。


イマーシブ度に関しては機械の存在を忘れて音楽に没頭できるレベルには、HD650バランスであと0.9歩、HPT-700であと0.1歩それぞれ足りない感じ。HD120だとHPT-700でイマーシブなラインは超えてくるので、このあたりはアンプによって差が出ます。そしてイマーシブなラインを超えるか超えないかは音質に大きな差があります。上でHPT-700をK701に匹敵する自然さとかイマーシブだとか褒めてますが、Diabloで鳴らしたとたんそれがすべてなくなります。Diabloで鳴らすとHPT-700は能力が高いのは分かるのですが、どこがいいのが全く理解出来ない鳴り方をします。HPT-700の良さって「音楽の良さを引き出す能力」が高いことなんだろうけど、Diabloの癖でそれがかなりスポイルされている感じです。ブラインドでHD120とDiabloで鳴らしたHPT-700を聴かされたら、全く違うヘッドホンと判定されてしまうでしょう。対してHD650(バランス標準ケーブル,約800時間,非ランダム再生エージング)はアンプの癖もすべて取り込んでHD650の音にアレンジして出力する感じで、どの環境でもそれなりに良い音で鳴ります。ただし、「音楽の良さを引き出す能力」もそれなりです。別の言い方だと、どんな環境でもHD650の音を楽しめるといえます。ただし、このHD650の印象は(推定800時間,非ランダム再生エージング)での印象で、HPT-700と同じく長時間のランダム再生エージングをしたら、どうなるかは分からないです。以前はHPT-700とHD650は互角と評価していたわけですし。


結論としてはエージング法による影響の方がバランス接続による音質向上効果よりも大きいと言えます。世間的にはシングルよりもバランスの方が絶対的に優れているという風潮が強いですが、個人的には無理してバランス化する必要はないと思います。たしかにバランス化による解像度と定位感の向上は素晴らしい。これはバランス否定派の私が認めるレベルで素晴らしいです。多くの人がそれで入れ込んでしまうと言うのも分からかなくはない。だけどバランス駆動は部品が増えた分、音色の低下が若干感じられてしまう。音色の色彩感が、生命感が低下する。これはなぜか私以外誰も指摘してないようだけど、比べれば分かる差なんでね。
 定位に関してはHPT-700で既にカンストレベルで、各楽器の定位する距離感は他のヘッドホンと全て一緒の横並び状態なので、バランス化してもそこは変わらないだろう。各楽器の定位する距離感が音源依存でどのヘッドホンでも一緒、この状態が仮に「各楽器の定位する距離感を正確に再現している」というレベルに達しているのだと言えるのなら、定位や音場にこれ以上拘るのは意味がないだろう。ただ厳密にいうと何もかもが全く同じというわけではなくて、細かいことを言えば、例えばK701に比べてAD700はユニットが近くにあるなって鳴り方はする。AD700は元々スピーカーが消えにくい鳴り方と言うのもあるんだろうね。でも各楽器の定位する距離感という意味では変わりがない。スピーカーで言うとスピーカー間の距離がほんの僅かに違うようなもの。K701の方がユニットと耳との距離があるので、窮屈な感じはAD700よりは少ない。音場が広いと言われるのはK701の方だろう。だが、所詮ヘッドホンなので、ユニットと耳との距離には限界があるので、ヘッドホンの域は絶対に出ない。現状、両方比べて「K701の方が優れているが、AD700でも良いか」と思える程度には音場定位へのコダワリは無くなってしまっている。それより現状気になっているのは、歪でしょうか。濁りが少なくなって音質が上がってくると、今度は歪が耳に突いてくるので。この歪を何とかしないと音楽性をこれ以上上げるのは難しいだろう。
解像度に関してはまだまだ上げられる余地はあると思いますが、バランス化は確かに解像度は上がりますが、音色を悪くして音楽性を低下させてまでやることではないと思います。音聞いてるんでなくて音楽聴くわけですからね。音楽性の方が大事ですよ。Diabloを聴く限りはバランスが絶対的に良いとは思いませんね。バランス駆動にデメリットが全くなかったら私もバランス信者になったかもわかりませんが、正しいエージング法でクリアネスを簡単に稼いでしまえるからね。デメリットのあるバランス駆動にわざわざ鞍替えする気にはなれないのよ。エージングには時間が掛かる以外のデメリットはないしね。みんなもエージングには拘った方がいい。





■エージングについて

マニアックすぎてマニアの人でも99.9%の人がついてこれない話題。むしろオーディオに興味ない人の方がすんなり受け入れてくれそうな話題です。


みんな知ってると思いますけど〜、わたし、エージングにドハマリしてて、自分でエージング用のノイズ作るくらい好きなんですよ〜。そこで、今日は、「エージングの重要性」についてみんなに教えてあげたいなと思いまして、エージングについて語りたいと思います!(上から目線でキリッ


上の記事を読めばエージングの効果は分かると思いますが、ここではその方法や条件について、深掘りしたいと思います。試してみれば「そういうことか!」と分かりますよ。

※ただし、実際に試したうえで書いていますが、現時点での個人的見解なので、100%正しいわけではありません。



■エージングとは?

わたしもこの現象は色々考えて仮説を立てていますが、現在の考えでは、
「エージングとは振動板を揺らして歪を減らすことで、振動板が撓んだ時のノイズ放射を減らして音質を上がっていくという効果」
と考えています。



■エージングに効く要素

エージングに効いている要素は「波形」「時間」「音量」の3つです。もっと広い目で見ればパッドの潰れなど、使用劣化・経年劣化も含みますが、それは音質向上が目的のエージングとは違うのでここでは含みません。

エージングについては○○時間鳴らしたら、それで終了。と思われがちですが、「波形」と「音量」でも結果は大きく変わります。現状の認識では「波形」が最も大事で、次に「時間」、その次に「音量」でしょうか。

「波形」が一番なのは「波形」が悪いと何千時間鳴らそうが良い音が出ないという経験があるからで、nighthawk carbonがそうです。nighthawk carbonは9576時間鳴らしているのに、K701(4325時間)やHPT-700(2123時間)にボロ負けです。AMとFMくらいの違いがある。本来nighthawk carbonはK701やHPT-700に負けるようなポテンシャルではないはずですが、でも、どうしようもないくらい勝てない。エージングした時の音質の上限を決めるのが「波形」です。


・「波形」について
では良い波形とは何か?と言う話になるのですが、良い波形とは振動板に歪を印加しないノイズ、言い換えると、繰り返し再生しても音質の低下を招かないノイズということになるのですが、このような波形は人工的に作ったノイズでしかありえないし、どのような波形がいいのかはノウハウがあるので話せないので、ここでは触れません。
ここでは、皆さんが簡単にできる方法。音楽を「エージング用の波形」として使う方法についてお話します。

その方法はもちろん上で書いている通り、「大量の音楽ファイルを用意してそれをランダム再生する方法」です。
上で「エージングとは振動板を揺らして歪を減らすことで、振動板が撓んだ時のノイズ放射を減らして音質を上がっていくという効果」と書きましたが、同時に流した波形によっても歪が入っていきます。エージングに使う曲によって音質が変わりますが、これは曲によって歪の入り方が変わってくることが理由になります。
そうなってくると、音質の良い楽曲と言うものはあるのか?と言う話になってきますが、通常の音楽と言うものはエージング用の波形としては歪が大きいので、連続再生に耐えられる代物ではありません。曲によっても音質は違いますが、どれもどんぐりの背比べで再生しても大した音質には仕上がりません。
ところが、今回のように大量の曲を使うと話が変わってきます。大量のファイルを使うと凄まじい効果が出ます。今回はDAPに入れられる限界の1212曲を使用しましたが、1人1人はざこでも1000人集まると相当な戦力になると言う感じでしょうか。
普通に鳴らしても歪は平均化されそうなものですが、CD1枚分の60分では全く足りなかったようです。1212曲(約88.1時間)になると全く違う効果を発揮するようです。1曲1曲は歪を消すようには作られてないし、大した仕上がり音質でないので、それらを組み合わせても気休め程度しか変わらないだろうと考えていたので、これは驚きの効果です。

だけど1212曲(約88.1時間)でも順再生でループさせると癖が付き始めるようです。約88.1時間と言うと3日と16.1時間ですよ。理屈で考えると3日前に入った歪の痕跡が残っているとはとても思えないんだけど、その間複雑に振動させられて3日前に入った歪なんて残っているわけがない。のですが、K701での結果では2000時間のスパンで見ると不思議と癖が入ってくるんですよね。この癖はランダム再生でかなり軽減することが出来ました。ランダム再生だと曲の組みあわせで考えると、同じ波形が存在しないからでしょう。もしくは、同じアーティストの曲を連続で再生せずに全く違うアーティスト、曲調を一曲ごとに切り替えるので、歪を平均化する上で有利に働くのかもしれません。順再生とランダム再生の差は、ヘッドホンや曲数によっても変わるかもしれませんが、K701の例では解像度は2割増しで癖もより少なくなる感じです。


では「どれくらいの曲数を用意すれば良いか?」ですが、無限に曲を用意できれば問題ないのですが、有限の場合は、少なくとも60時間、欲を言えば100-200時間分の曲を用意するのが良いと思います。
これは順再生からランダム再生に切り替えたときの音質が良くなるまでの時間が基準になっています。音質に影響を与える時間は同じ波形を入れない方が良いだろうということです。K701だと60時間で大きく音質が良くなって、100-200時間かけてじわじわ上がっていく感じだったので。今回のK701のレビューに使った1212曲(約88.1時間)は理想から言うと少し少ないのですが、ランダム再生だと、たとえ1景年再生しても同じ波形パターンは現れないのでこれでも十分かと思います。HPT-700のエージングはPCで行いましたが、評価の公平性を考慮してK701と同じファイルを使いました。

また、同じ波形パターンが現れないという観点では、ラジオ、テレビ、YOUTUBEの垂れ流しなどは恐らく良い音質に仕上がると思います。逆に言うと、ラジオ、テレビ、YOUTUBEの垂れ流しを日常的にしてる人は「大量の音楽ファイルを用意してそれをランダム再生するエージング方法」自体、特別な効果を感じないとも言えます。ただ長時間再生の効果はあると思います。ラジオ、テレビ、YOUTUBEの垂れ流しなら4000時間もあっという間だろうね。。。(24時間垂れ流しで半年)

「え?テレビの音はそんなに良くない?」

新品時と比べれば各段に良くなっているし、スペックの割にかなり良い音出ると思いますが、「大したことない」そう感じるのは、テレビなどは振動板以外からのノイズが多いと言うのがあるのでしょう。
エージングで音質が良くなる現象は振動板のノイズ放射を減ることで実現しています。足し算的に音質を良くしているわけでなく、引き算で音質を良くしているわけです。そもそも足し算で音質が上がることは絶対にありません。まずソース自体を忠実に再現した波形である原音があり、オーディオではその原音に様々なノイズがのった状態で出力されます。それがオーディオ機器の癖だったり個性だったりするわけです。オーディオの世界は好き好きで「この個性が良いんだよ」と言う向きもありますが、もしあなたが、相対的な音の良さでなく絶対的な音の良さを目指すなら、こういったオーディオの癖、個性は唾棄すべき存在です。癖・個性の原因であるオーディオ固有のノイズ成分は原音波形を歪ませて表現力を確実に低下させるからです。例えば感情表現一つとっても声色の微妙な変化を正確に再現する必要があります。そうするためには原音に忠実に再生する必要があり、演出と称して原音に余計なノイズ乗せたって音色のグラーデーションが悪化するだけで、表現力は確実に落ちます。オーディオにおける音楽性とは「音源をいかに忠実に再現するかという原音忠実性の高さ。」であって、決して演出によってもたらされるものではありません。オーディオにおいて「この演出があるから音楽性が高い」と言うのははっきり言って嘘っぱちです。もちろん音楽制作においてはそういうことはあると思いますし、オーディオにおいても特定の曲とマッチして良く聴こえると言うのはあると思います。なので嘘っぱちと言うのは言い過ぎですね。しかし、オーディオにおいて演出をすると言うことはノイズを増やすことに他ならないわけで、感情表現力は確実に落ちてきます。では感情表現が出来ない音を音楽性が高い音と言えるのでしょうか? 言えるわけないですよね。なので、オーディオにおいて音楽性を高めるには原音忠実性を高める以外にないのです。逆に言うと音楽的に鳴るかどうかは好みの問題でなく、性能の優劣なんですよね。音楽性は音源に収録されていて、それをいかに忠実に取り出せるかって話なので。
なにが言いたいのかと言うと、オーディオはノイズとの戦いで、ノイズを減らせばそれだけ原音に近づくことができると言うことです。原音 + ノイズ = オーディオの音だからね。
※ただし、原音波形以外の原音波形を歪ませる要素をすべてノイズと見なしています。

振動板からのノイズ成分が減ったとしても、テレビは筐体の箱鳴りするし、電源も貧弱なので、限界性能はそこまで高くないのでしょう。でも3年くらい使いこんだうちのテレビの音。「所詮テレビの音」という色眼鏡を外すと結構良い音で鳴ってるんだよねぇ。



・「時間」について
一般的なエージングタイムは大体100-200時間が相場です。100-200時間だと、24時間スパンでは音質の変化が分からなくなるので、そういう意味ではそんなにおかしな数字ではないでしょう。ですが、数百〜数千時間のスパンで見るなら100-200時間以降も音質は変化し続けますし、音質も全然違うレベルになります。100-200時間は鳴らしていないに等しいのです。

では、どれくらいの時間鳴らす必要があるか?ですが、現在の私の見解では、「通常使用の音量域ではエージング時間は2000-4000時間は必要。」と言うものです。振動板の材質にもよるので一概に言えないかもしれませんが、4000時間以上は時間による音質向上はほぼ感じられないし、ここから先は「波形」による音質への影響の方が大きいので、4000時間以上鳴らす音質的メリットは感じられません。もしかしたら40000時間、400000時間と鳴らせば、違うのかもしれませんが、実現不可能で全く現実的ではありませんよね。 バーンインノイズのテストに使っているnightowl carbonは少なくとも24000時間以上は鳴らしています。このnightowl carbonとK701(4325時間)やHPT-700(2123時間)の音質差はほとんどありません。それを考慮して、4000時間以上鳴らしても長時間再生による音質的メリットはないと判断しています。ではなぜ4000時間にしているのかと言うと、これはnighthawk carbonを基準にしています。nighthawk carbonのエージング時間は9576時間ですが、3600時間以降は音質レベルが変化しなかったので、大体4000時間は必要だろうという判断です。もちろん振動板の材質は機種によって違うのでもしかしたら4000時間以上かかる機種があるのかもしれませんが、大体の機種は4000時間あれば十分だと思います。

・「音量」について
 以前は「大音量でないと、振動板の歪は取れない。なので大音量で鳴らす必要がある」と考えていた。ところがどうやらそうではなく、通常の試聴音量でも時間さえかければ、振動板の歪が取れて大音量時と変わらない高音質が達成できるのでは?と思うようになった。ただしその時間が2000-4000時間の超長時間なのだがな。あまりに長時間ゆえに、これを実証するのは難しいのだが、こう考えるのは「Sound Improver Oneをmaximum inputで流したnightowl carbon」と「1212曲の音楽を試聴音量でランダム再生したK701(4325時間)やHPT-700(2123時間)」が、大して変わらない音質レベルだったと言うところでしょうか。大音量でないと取れない振動板の歪があるなら、ランダム再生方式が如何に優れていてもnightowl carbonレベルの音は絶対に出すことができないはずですが、どうやら2000-4000時間の長時間鳴らし込めばできてしまうようなんですよね。今作っているバーンインノイズもAD700でテストしていますが、試聴音量の+12dB程度(せいぜい19.2mw程度)の入力で鳴らしているのにnightowl carbonよりも良い音が出ている。これは小音量時よりも効果をあげやすいよう波形を工夫しているし、波形自体が優れているというのもあるんだけど。これらのことから、どうも音量が絶対的な音質差としては表れていないようだとは感じています。「通常音量でも超長時間再生すれば、大音量エージングと全く変わらない音質になるのか?」と聞かれたら、「条件を揃えて試していないので分からない」と答えるしかありません。ですが経験から予想すると、差があったとしてもかなり小さくなるのではないかと予想しています。現状ではハッキリとしたことは言えないのですが、少なくとも「大音量でないと、振動板の歪は取れない。なので大音量で鳴らす必要がある」と言うのは間違っていたのでしょう。

経験側で言える大音量と小音量の違いは、大音量では音質がグワッと即座に良くなり、その後ジワジワ上がっていく感じで、対して通常の試聴音量域だと最初少しだけ音質が上がってその後ジワジワジワジワジワジワ上がっていく感じでしょうか。大音量では歪が取れるのが早くて音質が上がるのも早いのでしょう。通常使用の音量域では2000-4000時間もかかってしまいますから、そんなに時間をかけたくないなら大音量で鳴らした方が良いと思います。と言っても安全に鳴らせるのは試聴音量の+12dB程度でしょうか。この音量でも5Hzの正弦波流すとDT880のように壊れてしまいますし、他人が作った音楽にどんな波形が含まれているか分からないのでリスクはゼロではありません。Sound Improver Oneだとmaximum inputでも壊したことないですけど。壊れるかどうかは波形によります。音楽は基本的に正弦波でないので、正弦波と比べて負荷はずっと少ないので試聴音量の+12dB程度では壊れないと思いますが、絶対に壊れない安全率を取るなら+9dBにしといた方がいいかもしれません。+12dB以上の音量でも壊れないとは思いますが、壊れるかもしれないチキンレースになってくるのでやめといた方がいいよって話です。
それから大音量で鳴らすと即座に音が良くなりますが、その後のジワジワを気にすると、maximum inputで鳴らしていても、結局数百時間のエージングタイムは必要な感じでした。maximum inputでも数百時間ですよ?100倍パワーを入れたから100倍早く終わると言う感じではないです。もっとも「大量のファイルをランダム再生する方式」でエージングするなら、ファイルを再生するのに60-200時間以上かかってしまうので、どの道数百時間はかかってしまいますけどね。


それから「大音量で再生したり、長時間再生するとドライバーがへたって良くない。普通に使うのが一番。」と言う人もいますが、自分の経験では、nightowl carbonやHD600,SRH1540はmaximum inputで数千〜数万時間鳴らしていますが、へたったと感じたことは一度もありません。
「へたる」と言うのが、振動板を振動させて、振動板をよりしなやかに柔らかくするという意味ならその通りだと思いますが、少なくとも「ヘッドホンの限界性能が低下して音質が悪くなる。」と言うようなことは一切おこっていません。
むしろみんな鳴らさなさすぎてヘッドホンの性能を全く発揮できていない。ヘッドホンを最高の状態で鳴らしたいのなら、もっと鳴らし込むべき。



■メンテナンスについて
ここまでのことが分かってくると、「一曲ALL問わずループ再生を多用する人」「お気に入りの曲をヘビーローテーションする人」は普通に使っていると、スピーカーやヘッドホンの音質を低下させやすいことが分かります。そういうことをする人のヘッドホンやスピーカーの音ってめっちゃ悪いと思います(おまえじゃい!)。また、人間好みと言うものもありますし、何千曲曲を持っていてもお気に入りの数は限られます。全ての曲を満遍なく均一に聴く人はほぼいないと思います。音楽をBGM的に聴く人以外は。つまり「ループ再生していなくても、いまお気に入りの限られた数の曲を重点的に聴く人」も歪を平均化できるほどの曲数をヘッドホンに入力できないので、少なからずスピーカーやヘッドホンの音質を低下させることになります。
よって、日頃の使用によって溜まった歪を除去するためのメンテナンスが定期的に必要になると言うことです。


メンテナンスの方法は「人工的に制作された歪印加量が極小のノイズを再生する方法」か、「大量の音楽ファイルを用意してそれをランダム再生する方法」の二つなのですが、ここでは後者について話します。
「大量の音楽ファイルを用意してそれをランダム再生する方法」は不完全で歪が多い特性の波形でも常に違う波形を入力し続けることで、特性の違う歪で上書きし続け、歪を平均化して極小化するという原理なので、大量の音楽ファイルを再生し終えるまで時間が掛かることが問題になります。歪の平均化自体に時間が掛かるので、音量を上げても時間短縮は出来ないと言うことです。普通の音量で完全に音質が落ち切ってからベストコンディションになるまで60-200時間は掛かってしまうので、音質が落ち切ってから行うのでなく、日ごろ使わない時間にちょくちょく鳴らしておくのが良いと思います。面倒くさいと思うかもしれませんが、時計マニアがワインディングマシーンを使うような、ある種の儀式みたいなものです。


それから、ずっと以前から通常の音楽を再生すると歪が蓄積して音質が低下するだろうことは予想していましたが、私のバーンインノイズは大音量で鳴らすことを前提としているため、「大音量域で歪を取ってしまえば、数百分の一のパワーで鳴らした時に印加される歪の影響はそこまで大きくないだろう」と考えていました。ところが試聴音量域でこんなに音質差が出るとなると、「大音量でないと、振動板の歪は取れない。なので大音量で鳴らす必要がある」と言う仮説が崩壊してしまっているので、試聴音量域で入る歪の蓄積も恐らく無視できないだろうとなりました。ただし、これは経験に基づく予測であって、「どの程度の時間で音質が低下するか?」「どの程度まで音質が悪くなるか?」はまだ確かめていません。1-2時間程度の試聴で音質が低下することは経験していませんが、数十時間数百時間の再生なら変わってくるかもしれません。この予測は結構自信ありますが、あくまで予測なので外れる可能性もあります。その時は手の平返すのでご了承ください。自信ありますが、100%の正しさは保証できないと言うことです。

※これを書いている時にHPT-700で聴きながら書いていました。3時間くらい聴いていましたが、僅かに音が鈍る感じになりました。音質レベルが高いと僅かな違いもすぐに分かってしまいますね。プログラム再生で鳴らし続けてみたら、6時間でメンテナンスしたくなる音質になってきました。それでも十分良い音ではありますが、ベストコンディションからするとSNが低下するんですよね。15.5時間まで鳴らしてみましたが、音質の低下が非常に緩やかで、15.5時間時でも良い音は出していました。人によってはこれでも全然問題ないともいます。サ行の掠れが濁りで誤魔化されて目立たなくなったので、むしろこれくらいが聴きやすくて良いて人もいると思うくらい。解像度は1070段クラスで、1割落ちた程度でそんなに悪くないです。ですがベストコンディション時の超高SNは無くなったので、それを維持したいなら賞味期限は数時間ってところかも。
さらに27.5時間まで鳴らしてみましたが、解像度は990段クラスで、音質はジワジワ落ちるけどそんなに早く落ちない感じです。もっと早く音質が落ちると予想してたのですが・・・
33時間で、音の曇りが増えてきました。音もやや詰まり気味かも。解像度は860段クラス。
41時間で許容できないくらい濁りが増えてきた。ベストコンディションと比べると別物のヘッドホンと言っていいくらい透明感がない。解像度は670段クラス。EPT-700(02s91 LRSWHN741, 2.406Vrms, +470段(これを基準とする))と比べるとまだ200段くらい良いけど、ベストコンディション時の圧倒的な差はもはやない。
51時間で音質が悪くなると思いきや、にごりはそこまで感じない。解像度はEPT-700(02s91 LRSWHN741, 2.406Vrms, +470段(これを基準とする))と比べると250段程上、720段クラス。41時間時よりも良いが、これは再生を止めたタイミングや再生していた音源による誤差範囲かも。
75時間鳴らしたが、51時間よりも僅かに音質が低下したかな?解像度はEPT-700(02s91 LRSWHN741, 2.406Vrms, +470段(これを基準とする))と比べると220段程上、690段クラス。大方音質は落ち切っている気がするが、たぶんこれからもジワジワ下がっていくのだろう。
94時間鳴らしたが、75時間時よりも僅かに曇りが増えたかも。解像度はEPT-700(02s91 LRSWHN741, 2.406Vrms, +470段(これを基準とする))と比べると+150段程上、620段クラス。 100時間鳴らしたが、94時間時よりもかなり曇ってきた。解像度はEPT-700(02s91 LRSWHN741, 2.406Vrms, +470段(これを基準とする))と比べると+100段程上、570段クラス。それから奥行きが24mのカンスト状態でなく、48mになっている。
121時間鳴らしたが、100時間時とあまり変わらない感じかな。解像度はEPT-700(02s91 LRSWHN741, 2.406Vrms, +470段(これを基準とする))と比べると+100段程上、570段クラス。それから奥行きが24mのカンスト状態でなく、48mになっている。
151時間鳴らしたが、121時間時に比べて音が硬くなりしなやかさが無くなった。音が痩せてきた。クッキリ感はあるが情報量の少ないスカスカな音。生気がなく音が氏にはじめている。解像度はEPT-700(02s91 LRSWHN741, 2.406Vrms, +470段(これを基準とする))と比べると-50段程下、420段クラス。それから奥行きが24mのカンスト状態でなく、39mになっている。 170時間鳴らしたが、151時間時よりちょっと良いくらいの音質レベルで音痩せは無くなったが、詰まり感が出てきた。解像度はEPT-700(02s91 LRSWHN741, 2.406Vrms, +470段(これを基準とする))と比べると+10段程上、480段クラス。それから奥行きが24mのカンスト状態でなく、39mになっている。
197時間鳴らしたが、151時間時と似たような音質レベルになった。音痩せがあり、詰まり感が僅かにある。解像度はEPT-700(02s91 LRSWHN741, 2.406Vrms, +470段(これを基準とする))と比べると−60段程下、410段クラス。それから奥行きが24mのカンスト状態でなく、44mになっている。
200時間鳴らしたが、197時間時と似たような音質レベルになった。音痩せがあり、詰まり感が僅かにある。生気のないつまらない音。解像度はEPT-700(02s91 LRSWHN741, 2.406Vrms, +470段(これを基準とする))と比べると−100段程下、370段クラス。それから奥行きが24mのカンスト状態でなく、50mになっている。

これまでは実際に試聴をシミュレーションしたものをプログラム再生したもので音質をチェックしたが、最後に1アルバムループ再生でどれくらい音質が落ちるかチェックして終わりとしよう。

200時間のプログラム再生から20時間の1アルバムループ再生を行いました。アルバムは松任谷由実のROAD SHOW(Nighthawk carbonの時に良いと判断されたアルバム)
音質がさらに悪くなると思いきや、音は思いのほかクリアで、特に問題のない音。200時間時のプログラム再生よりも音が良い。
傾向はニュートラル。詰まり感なし。閉塞感なし。抑圧感なし。音色はかなり良い。まだ機械の存在を忘れて音楽に没頭できるレベルのボーダー上にある。解像度はEPT-700(02s91 LRSWHN741, 2.406Vrms, +470段(これを基準とする))の-20段程下。+450段の解像度。解像度に段という単位を使うのはどうかと思うんだけど、伝統だね。HD650(約800時間,非ランダム再生エージング,HD120再生)はEPT-700基準だと+290段の解像度なので、HPT-700はHD650の155%の解像度と言うことになる。奥行きは24m(カンスト)。
 色々不可解なことが起きている。まず解像度が上がっているという点。これはプログラム再生では1曲あたり1-7連続再生して、次の曲に切り替えると言う感じで再生しています。曲数は1アルバムより多いのですが、1曲を何回も連続再生するため1アルバムループ再生よりも音質面で不利なのかもしれません。プログラムは適当に組んでいるので、組み合わせによっては音質が良かったり悪かったりします。なので運の要素もあります。
それから解像度ではEPT-700よりも悪いと判定されているのに、音色は良く音楽への没入感が高い。あと奥行きはカンストレベルにある。この解像度で奥行きがカンストレベルになっているのは初めてだ。このあたりはどうしてかは分からないのだが、音源が良かったのかもしれない。解像度に関してはnighthawk carbon(エージング9576時間)やK812-Y3(エージング289時間)と比べて高いレベルにある。解像度だけでなく、音色がnighthawk carbonやK812-Y3よりも明らかに良いから、それよりずっと良い音に聴こえる。HPT-700の音が良いのはアルバムの仕上がり音質が良かったり、そのアルバム以前になにを再生してたかが影響してたり結構運の要素があると思うのですが、概ね以下のことが言えると思います。

1アルバムループ再生を多用するエージング条件においては、HPT-700(エージング1000時間)はnighthawk carbon(エージング9576時間)やK812-Y3(エージング289時間)に音質的に劣っているのだが、エージング時間を2628時間まで伸ばしたHPT-700(エージング2628時間)はnighthawk carbon(エージング9576時間)やK812-Y3(エージング289時間)を概ね上回る音質を出せる。

と。どうです?長時間エージングもなかなか馬鹿にできないでしょう?ヘッドホンのヒエラルキーをひっくり返せる程度の差は出るようです。もっとも大量の音楽ファイルをランダム再生した時と比べるとどんぐりの背比べ程度差でしかないんですけどね。



結論としては音楽の再生パターンによりますが、普通に聴いていると音質はかなり落ちると言う結論になりました、HPT-700は現在で2628時間鳴らしていますが、ただ鳴らしているだけではこれだけ音が悪くなってしまう。流している「波形」で音質の上限が決まってしまうので、いくら長時間再生してもその効果は限定的だと言えます。と言うか「長時間エージングの効果なんてほとんどないんじゃないか?」と思えるレベルまで音質が落ちてしまった。やはり音質を保つにはメンテナンスが必要で、

常に最高音質を保ちたければ、使うたびにメンテナンスをすること。そうでなくとも、少なくとも使用時間が30時間に到達する前にメンテナンスをしたほうが良い。

という結論になりました。



■その他
「K701すげええええええ!」って記事から「エージング超大事!」と言う記事になってしまった。読者の中に「なんでこいつK701ごときをこんなに褒めてんだ?」と思った人もいたと思う。それは同じヘッドホンであっても、同じ音で鳴ることはありえないと言うことの証明なのです。アンプや電源などの環境要因だけでなく、エージングや普段音楽をどういう聴き方をするかも影響するなら、同じ音を聴くのはまず不可能。同じ音を聴きたいならその場で一緒に聴くしかないと言うことになります。私のようにおかしなレビューを書く人がいてもそういうことと割り切ってくださいね。レビューでは「どの程度の位置づけか?」「どのような傾向か?」くらいしか伝えられないと思っていましたが、厳密にはそれすらかなり難しいようです。大体こんな感じの音と言いたいところですが、今回のようにエージングでも個体差と言う言葉で片づけることが出来ないような全く違う音になることを考えるとね。。。私のレビューはただの読み物と思ってくれ。。。

この記事を読んで「エージング超大事!」と思った方は、今から頑張ってみましょう。最もコストパフォーマンスが高く、最も効果的な最強のオーディオテクニックですよ。これは。


しかし、この「大量の音楽ファイルを用意してそれをランダム再生する方法」はすごいね。推定なのだが、nightowl carbonとHPT-700,K701が大体同レベルのヘッドホンとすると、私の作った販売版のバーンインノイズ(Sound Improver Oneって言うんだけどね。)とほぼ同レベルの音が出せるってことだからね。大量の音楽ファイルの再生が必要なことから、時間がかかる欠点があるのだが、時間さえかければ安定して良い音出せる。そして何よりも誰でもすぐに実行できる。これが私がこの方法を推す理由ですよ。エージングの方法でこんなに音が変わるのに、みんなに体験してほしいとは思うからね。


バーンインノイズを作り始めて3年ちょっとになるけど、3年頑張って創ったノイズに1212曲の楽曲に追いすがってこられるのは納得できないのだが、事実だから仕方ない。Sound Improver Oneは1000曲に相当する一騎当千とも見れなくはないのだが。もっと良いもの作らないとな。現在開発中のノイズはAD700で1590段の解像度って感じなので、このノイズを改良して2割程改善して1900段、それ+αくらいの音質レベルには出来そう。本当はK701の2倍とか3倍の2400段〜3600段クラスの音を出したんのだけど、現状ではそこまでの音質に到達させるだけの道筋が見えていない。
まぁ?実際にやってみないと分からない部分が多いから、蓋を開けてみたら2400段クラスの音が出るかもしれないし、思ったより効果が出なくて1900段以下の音質しか出せんかもしれないけど。
次作るのは、音質の改善だけでなく、エージングタイムの高速化、使用方法の簡素化、小音量でも使用可能、スピーカーでも使用可能、と言う欲張り仕様にしようと思っている。
しかし考えてみれば、より良いものを作れるのも、経験の積み重ねがあるからだ。今製作しているノイズも今までの経験の積み重ねがあるから作れるわけで、Sound Improver Oneを作ったのも決して無駄ではなかったのだろう。。。と思うことにした。



■まとめ
通常の音楽で最もいい音を出すエージング法は
・とにかく大量の音楽ファイルをランダムに再生すること。
・音楽ファイルの時間は少なくとも60時間、欲を言えば100-200時間分の曲は必要。それ以上ならなお良し。(※3)
・同じ波形パターンを再生しないことが重要なので、ラジオやテレビの垂れ流しは効果的なはず(私は試していないけど)
・エージング時間は普通に聴く音量では2000-4000時間は必要。音量を上げると早くエージングが進むが、10倍のパワーを入れたから10倍早く進むわけではない。自分の経験からの予測だと普通に聴く音量から+12dB(4倍の電圧、16倍の出力)で鳴らしてエージング時間が1000-1500時間に短縮できるだろうと言った感じ。予測だからそこまで正確ではないが、16倍のパワーで鳴らしたから4000時間の1/16の250時間で終わるってことはない。
・音楽波形が音質に影響するということは、普段聴いている音楽も音質に影響するということ。そして特定の曲を繰り返し聴いていると、音質が低下しやすい。特定の歪みが蓄積するからね。そのため音質を維持するためのメンテナンスが必要で、常に最高音質を保ちたければ、使うたびにメンテナンスをすること。そうでなくとも、少なくとも使用時間が30時間に到達する前にメンテナンスをしたほうが良い。
・ここで言うメンテナンスとは「大量の音楽ファイルをランダム再生すること」になるので基本的に使用している時間以外も音を鳴らす必要があるということになります。


(※3)20230523_追記
60時間とか100-200時間という数字はK701やHPT-700では1アルバム順再生から1211曲ランダム再生に切り替えて、それくらいの時間で大きく音が変わってきたから、それくらい要るだろうという話なのですが、ヘッドホンによってはそれ以上に時間がかかるようです。nighthawk carbonがそれで、それまでに9576時間の鳴らしているにも拘らず、ランダム再生に切り替えて60時間たっても音質がほとんど向上せず、良くなってきたのは600時間を超えてから。音質が上がりきるまでに2000時間はかかりました。
なので、この記事見てランダム再生のエージング法を試してみようって人がいるかもしれませんけど、ヘッドホンによってはかなりの時間かかることがあると考えたほうがよさそうです。大体の場合はK701やHPT-700と大差ないと思いますがね。






2022/04/26 執筆    
2022/04/28 公開